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ショッピングを続ける「ゆし木」。本土での名前は「イスノキ」。比較的安価な三線の棹に使用される材である。しかし、次のような表記のある場合は要注意! 「ゆし木(実入り)」「実入りゆし木」「ゆしの実」ほぼこの3パターンの言い回しになろうか。 なぜ、これらの表記が要注意かと言えば、「実入り」とか「実」の部分が要注意なのである。じつは、この「実入り」とか「実」と表記されているのは、ゆし木の中でも超希少な心材なのである。 ここに2枚の写真を用意した。左が「ゆし木」であり右は「実入りゆし木」あるいは「ゆしの実」と表記されている棹である。 |
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「ゆし木」 |
「実入りゆし木」あるいは「ゆしの実」 |
どうだろうか。「実入り」の表記のある棹には、濃い模様が入っているのがお分かりだろうか?三線のゆし木棹で、この「実入り」は、更に密度が高くよく詰まっている材として最上級にランクされる材である。 ゆし木そのものは、沖縄へ行くと良く見られる木である。台風から家などを守る防風林にも使われている。つまりは、それだけしっかりとした硬い木であり、強い風でもびくともしない。また、それだけシナリもある木である証拠だ。例えば体操の競技で鉄棒という物があるが、あの鉄棒もよくシナル。シナリが無ければポキっと折れてしまうからだ。ゆし木は滅多に折れない。だから王朝時代より三線の棹に使用されてきた。 王朝時代に飛びぬけて音の美しい三線が存在した。これらは開鐘(けーじょー)三線と呼ばれており、ほとんどは黒木の棹を持つ。しかし富盛開鐘(とむーいけーじょー)だけは「ゆし木」が使用されていた事は有名なお話だ。 ここで「ゆし木」とは何ぞいや?と疑問を抱いたのでネットで検索してみた。しかし、これと言った答えを得る事ができなかったので「イスノキ」で検索。出てきた。次に紹介する文面は、(材)日本木材情報センターのホームページで見つけた文章である。 |
「心材と辺材の境界はとくにはっきりしているとはいえません。前者は紅色を帯びた褐色、あるいは紫色を帯びた褐色で、後者はやや紅色を帯びた淡黄褐色ですが、ときに濃色の縞が不規則に出てくることがあります。年輪はあまりはっきりしてはいません。肌目は精で、木理が乱れることがあります。気乾比重は0.75-0.90(平均値)-1.02で、非常に重硬で、イスノキは日本の木材の内で最も重いとされています。」 文中の最後の部分、「非常に重硬で、イスノキは日本の木材の内で最も重い」とある。 |
(材)日本木材情報センターのホームページより転載 |
最近では棹の材として紫檀や縞黒檀が登場し、かなりの低価格で販売されている。しかしそれよりも安価で販売されてきた「ゆし木」は馬鹿に出来ない素晴らしい棹の材であることが分かると思う。冒頭で安価な三線に使われていると書いたが、それはこの木が沖縄のどこにでも生えていて、いくらでも使えたからで、最近ではみだりに伐採する事ができなくなっていると聞く。 これは、私どもの和於屋三線に三線を提供してくれる職人さんから聞いた話であるが、「ゆし木は、特に実入りと呼ばれる素晴らしい材は、在庫で抱えているもので終了です。これらの材は五年以上乾燥させた素晴らしい材ですが、もう沖縄には数少なくなっています」との事。 もう沖縄県産のゆし木は少なくなっている。特に「実入り」は、本当に希少な存在となっている。これは私見であるが、下手をすると八重山黒木よりも少ないのではないだろうか? 皆さんの中でも「沖縄県産ゆし木棹」を持っておられたら、少しネットで調べてみてはいかがだろうか。沖縄県産の黒木が「まぼろしの材」となりつつあるが、あなたの持っている「ゆし木」も、ひょっとしたらこの先、沖縄県産ゆし木として、「まぼろしの材」になるかも知れない。 更に実入りであると、もう手に入ることは少ない。最近の棹はスンチー(透明)塗りが施してあるので、「実入り」とか「実」の表記の棹が一目でわかる状態であると思うのでお早めに手に入れた方が良いかも。 |